森のなかの標本室

不思議な標本を作るアートユニット「飴色団栗研究室」にまつわるちょっとしたおはなし

夜の研究室1

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蒸し暑かった昨日までとは打って変わって、涼しい夜であった。窓の外からは雨の音。時折雷が室内を照らすが、明るさの割に音は遠い。

 

そんな夜中の研究室なんてお化けのひとりやふたり出そうなものだが、生憎そんな怪奇現象が起きたことはない。

 

屋根を打つ雨の音が少しずつ大きくなるが、無造作に積まれた標本箱の中はいつも通りひっそりと静まり返っている。

 

そんな標本を眺めていると、煩いはずの雨音がまるで夢のように現実味を失って、自分が一体どこにいるのか分からないような気持ちになってくるのだ。

透きとおる

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透き通ったものに、心ひかれないだろうか。

明かりにかざすとキラキラと光を屈折させるようなもの、欲しくはならないだろうか。

 

人はなぜ、透き通ったものを美しいと感じるのか。光が反射するか吸収されるか透過するか、その違いでしかないではないか。

キラリと反射して目立つからだろうか。星の光を手に入れたような気分になるからだろうか。水を固めたようで不思議だからだろうか。

 

水晶を発見した人類はそれを氷の化石だと思った、というエピソードが私はとても好きだが、確かに、自然界で氷以外の透き通った固体は希少なものが多いように思う。

 

透明なものがありふれている今の世の中でも、我々は本能的に、溶けて失われないキラキラした透明を神秘的な気持ちで見てしまうのかもしれない。

お茶の時間2

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左「コーヒー?」

右「うん、コーヒーかな」

左「私はアイスレモンティーにする。暑い」

右「あ、僕もそれがいいかも」

左「博士は何にします?紅茶キノコ以外で」

博「窓の前にエノコログサが群生しているのだが、お茶にできると思うかね」

右「エノコログサ?」

左「ねこじゃらしだよ、ねこじゃらし。博士もレモンティーでいいですね」

右「お茶にできるのかな」

左「ちゃんと干して、煎って、煮出せば悪くないかもしれない……あ、ちょっと!今から作る気ですか?」

博「行ってくる」

右「どんな味がするのかな」

左「ちょっと香ばしい素朴な草の味でしょう、たぶん」

右「あ、それレモンティー?」

左「そう。紅茶じゃなくて緑茶のレモンティー」

右「へぇ!美味しいの?」

左「思ったよりは合う。あと、見た目が爽やか」

右「確かに」

左「先に飲んでよう」

右「そうだね」

こどもごころ

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 流れる雲の形を見ているだけで幼い頃は随分と時間を潰せたものだが、今はなかなかそうもいかない。

 

刻々と形を変える雲を眺める楽しみは知っているが、全く同じように楽しいかと問われれば、そこまで夢中にはなっていないと答えざるを得ない。

 

こうして「感情」が「知識」へと移り変わった瞬間に、子ども心というのは少しずつ失われているのかもしれないと思う。

 

子どもは「未熟な大人」ではない。子どもは子どもという素晴らしい能力を持った生き物だ──というルソーの考え方が私は好きだが、既に知識と化したものを感情として取り戻すのは、大人となってしまった私には不可能なのだろうか。

 

否、と言い切ることはできないが、否と答えたい。守るものができた我々大人には捨てたくとも失えないものが多々あるが、雲を心底夢中で眺めることくらいは可能なはずだ。

 

さて、その雲に再び夢中になる方法については私もまだ検討中だ。なにか発見があれば発表するし、既に発見している方は教えてほしい。

 

 

歯磨きアイスを好きになる

今週のお題「好きなアイス」

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私も元はと言えば「歯磨き粉みたいな味するじゃん」派であった。アイスの中でも特に好き嫌いの分かれる味だろうと思う。そんな私がチョコミントをチョコミントとして好きになった経緯を、今日はお話ししようと思う。

 

きっかけは、ふらりと立ち寄ったカフェで興味本位に注文したフレッシュペパーミントティーであった。この場合のフレッシュというのは、乾燥茶葉ではなく生の葉っぱを使っているという意味である。

 

カップに顔を近づけると目に沁みる。飲まずとも物理的に分かる鮮烈な爽快感。普段より余計に瞬きをしながら口に含めば、暴力的なまでのミントの香り。口の中の清涼感はタブレットに匹敵するレベルだ。舌が痛い。しかし、風に吹かれて青々と茂る様をイメージさせる人工的でない良い香りと、無添加だと分かるどこか安心できる味がする。美味しい。楽しい。

 

思えばあの時、私にとっての「ミント味」が「歯磨き味」から「葉っぱの味」に変貌を遂げたのだと思う。

 

飲み込まずに吐き出すべき味から、嗜好品として楽しめる味へと変わったのだ。

 

ミントさえ克服してしまえば、あとはこっちのもの。先入観さえなければミントとチョコは相性がいい。もう私にとってチョコミントアイスとは、歯磨きみたいな変な味ではなく、ハーブティに一粒のチョコレートが添えられた、おしゃれな味のアイスなのである。

 

アイスに限らず、ミント味の食べ物に抵抗がある方はまず一度、ハーブとしてのミントを楽しめる方法を探してみてほしい。フレッシュミントティーと乾燥ミントティーは全く味が違うし、パフェなんかの上に飾られたミントが気にいる方もいるだろう。「ミント味」ではなく植物としてのミントが好きになれれば、もはやチョコミントはあなたのための味になるのである。

星豆

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星雲のような色合いからそう呼ばれている豆である。普通に分類するとしたらインゲン豆の仲間になるのだろうが、「森」の植物には独自の分類法が採用されているため、似ていても、インゲン豆ではない。

 

霧の谷付近に多く自生しており、かの民はこの星豆を甘く煮て食べる。味は花豆に近く、ほくほくとやわらかく、かつしっとりと品の良い甘さに煮上げるのが腕の見せどころらしい。

 

鮮やかな青系統の色味が多く、食欲が増すとは言えない外見な気もするが、特産品の夜空に見立てた黒い皿に数粒飾られた様は、お茶菓子としても中々に美しい。

 

おやつの定番として扱われているところからも分かるように「森」ではそれほど珍しい植物でもないのだが、実はこの豆、まだまだ謎が多い。

 

というのも、豆にまつわる噂話が色々と存在するのだ。

 

曰く、流星雨の次の日には爆発的に増えるだとか、月の光に晒すと光る豆になるだとか、ごく稀に「ブラックホール豆」が出現するだとか……。

 

流石にないだろうというものも多々あるが、火の無いところに煙は立たないという言葉もある。暇をみて一つひとつ調べてみるのも楽しいかもしれない。

機械都市遺跡

場所は森の中心から少し南西に行った辺り。曲がりくねって枝分かれした迷路のような構造を持つ広大な地下遺跡。それが機械都市遺跡である。

 

巧妙に隠された入口が森のあちこちに点在しており、今日向かった入口はマンホールのような丸い蓋が地面に埋まっている形だ。

 

そこに、何とも表現し難いヘンテコな形をした鍵を3種類差し込み、パスワード……もちろんデジタルではなくて、こう金庫のような12桁の暗証番号、いや暗唱記号?をダイヤル……ではなくパズル……パズル?で組み立て、ハンドルを回し、つまみを引っ張り──だんだん何の話か分からなくなってきたかもしれないが、遺跡に入るための扉の話だ──とそこまでやって、ようやく扉が開く。

 

遺跡の中はとにかく変な機械でいっぱいなのだが、その詳細はまたいずれということにしよう。

 

今日画像を紹介するのは、機械都市遺跡のなかでも特徴的なもののひとつ「歯車豆(ハグルマメ)」である。

 

機械都市では、オーガニックパーツとでも呼ぼうか、植物性の部品が大量に使われていたことが判明している。そのなかでも特に可愛らしい歯車豆は、歯車の形をした豆がさやの中でカタカタと回っている植物だ。

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画像の標本は半分に割れてしまっているが、勿論丸い形のものもある。

 

詳しい情報はいずれ作る植物図鑑を楽しみにしていただきたいが、とにかくここにはこういった変なものが山ほど詰まっているのだ。

 

博士はこの遺跡に特別ロマンを感じるらしく、最近は発掘された機械を組み合わせてさらに変なものを作ることにすっかりハマっている。

 

その改良……改造……発明?された不可思議な機械の数々も、いずれ紹介できたらと思う。