森のなかの標本室

不思議な標本を作るアートユニット「飴色団栗研究室」にまつわるちょっとしたおはなし

飴団栗の若琥珀

「飴団栗の若琥珀」という名の、飴団栗の木の樹液を使った菓子である。研究員が気まぐれに製造している。 若琥珀の「若」の意味がピンとこない方は「コーパル」で検索してみてほしい。宝石として価値が高いアンバーほど年数が経っていない若い琥珀をそう呼ぶ…

後ろ向きの光

物事を前向きに考えるだけで、世界が輝いて見える。素敵な発見がある。確かにそうだ。 では、我々はいつも前向きでいなければならないのか?気持ちを明るくする努力をし続けねばならないのか?私はそうは思わない。 涙、という名前の植物がある。これには不…

番外編:Xmasプレゼント企画

メリークリスマス!……にはまだ早いですが、本日12月3日からアドベント(待降節)に入ります。 世界中の教会がクリスマスツリーを飾りつけ、アドベント・クランツと呼ばれる特別なロウソクの最初の一本に火を灯します。来たる聖夜に向けてワクワクを降り積…

「使えない」は「もったいない」か

これ、アクセサリーだったら欲しいのに これだったら使えるし勿体無くないよね どうせ使わないんだから、やめときなさい 使えないものは、不要なもの。 不要なものは、節約するのが正しい姿。 もったいない無駄遣いだから「欲しがるべきでない」と自分に暗示…

番外編:アンケート結果発表

先日行いましたTwitterでのアンケート結果についての発表と考察です。 研究室側がある程度傾向を把握するためのアンケートですが、皆さんもよかったら暇つぶしがてら結果をご覧ください。 なお、傾向がはっきり数字で出ましたが「自分は少数派だからお呼びじ…

種花と占い

種から花だけが咲くから、種花。 発見された当初はそのまま「種から花」と呼ばれていた。それを省略して「種花」なのである。 「花の遺跡ではかつて占いに使われていた」といつも紹介しているが、それ故に花の遺跡でも「種花」と呼ばれていた訳ではない。当…

紋章と白衣

研究室には一応、本当に「一応」紋章がある。 帽子のないドングリ型の枠に、花の遺跡の種護紋様と冬に葉を落とした木の絵が詰め込まれている。 ただ、本当に紋章やロゴマークが必要なのかと言われれば、必要ないと言わざるを得ない。 看板もなければ、商品を…

秋と芸術と

今週のお題「芸術の秋」 「標本」に纏わる芸術活動を始めたのも、また秋であった。 それまで私達は「研究員」ではなく「工芸家」で、大学で学んだノウハウを元に「生活を彩り豊かにするもの」であるとか「ひとに喜ばれるもの」「便利で使いやすいもの」とか…

試験管標本の作り方

鉛筆の先を尖らせて、細く切った紙に学名やら採集日やらを書きつける。手首の角度がどうにも不自然なのは左利きの宿命である。 鉛筆の芯はやたら長く出ている。円錐型に削られた木の部分から芯だけが1センチ近く伸び、その芯の先端だけが小さな鉛筆のように…

博士、聞いてます?

──そしてこれがその、標本箱に見えるアートブックなわけです。 ──その前に、アートブックとは具体的に何を指すのだね。 ──単純に画集のことを指すこともあれば、本の形態をした芸術作品のことを指すこともあります。 ──本の形態をした芸術作品。 ──ケルズの…

標本箱の種類─蓋付き

引き出しの隅に置いておくのにこれほど適した箱も中々ない。 木の箱に木の蓋。もちろん板が乗せてあるだけではなく、きちんと嵌るように細工されている。 丁寧に作られてはいるが、素材もつくりもさほど高価なものではない。ショウケースに入れて置くには何…

標本箱の種類─紙箱いり木箱

木箱の中が紙箱で仕切られている標本箱である。 仕切りのある標本箱のいうのは往々にして仕切りも木で作られているが、時にはこうして、引き出しの中をお菓子の箱で区切るように紙箱で仕切ってみるというのも良い。木枠よりもずっと薄く、繊細で、風合いもま…

標本箱の種類─額縁風

壁にかけるのにこれほど──と始めたいところだが、これは壁に掛けられるようにできていないのだ。一体何故だろうか。それはこの箱が部屋や壁を装飾するものではなく、ただ標本を引き立たせる為だけのものだからである。 写真の箱は黒に近いこげ茶に金という取…

FP(フォレストポイント)

今週のお題「私の癒やし」 ありきたりかも知れないが、私にとって癒しといえば森である。 ゲームなどでは自らの状態を数値化したものとしてHP・MPなどという表現があり、それはどうも体力や精神力の残量を示しているらしいが、私にはそれに加えてFP(フォレ…

苔と腐蝕と

以前撮影した写真だが、錆びて朽ち始めた鉄製の側溝の蓋の周りに、ぽこぽこと丸い苔がたくさん生えている。 私はこれを見て「もこもこの生きものがビスケットのように鉄をかじっているみたいだ」と思ったから撮影したわけだが、まあそれは置いておくとしよう…

妖精の棲家

貝殻に作られた妖精の巣……もとい妖精の棲家である。貝殻は人気の物件で、水辺故かよく見ると苔生している。 煉瓦造りのような見た目から「巣」ではなく「棲家」と呼んでいるが、「家」という言い方をしないのは、妖精の生態にある。 彼等は確かに羽の生えた…

光る飴

飴団栗は、差し込む光の角度や強さによって、稀に内側から輝いているような光りかたをする。発光する性質はないし、中に電球が仕込んであったりもしない。薄暗い標本箱の中でキラリと光を発する様を見つけた時は、中々に運が良い。 飴団栗はその名の通り飴で…

試験管立て

(旧) 新しい試験管立てが完成した。以前のものは四角い箱に突き刺さっているようなデザインだったが、標本によっては横のラインが邪魔になるのと、一本用のものが多少繊細さに欠けるため、新しくより繊細なデザインが開発された。 (新) 素材は真鍮と紫檀…

番外編:展示感想─超絶技巧とアートブック

ついこの前の土日を使って、週末雑貨屋【海福雑貨分室】さんへ作品の納品に行って来たのですが──ありったけのロマンが詰め込まれた素敵なお店ですが、そのご紹介はまたいずれ──せっかくなので東京で驚異の超絶技巧展(三井記念美術館)とアートブックフェア…

標本室の朝

曇りの日の朝日というのは、独特の色をしている。どんよりとした雲の色と清々しい朝の光の色が混ざり合って、憂鬱なようなそうでもないような、散歩をするよりは読書をしたい、そんな色になる。 片付け上手が一人もいないため、標本室も研究室もいつも標本が…

彼岸花

「彼岸花」というより、「草花火」と呼びたい。 人によってはこの花を冥界の入り口に咲く花のように扱うが、私はこれを、見つけると嬉しい可愛い花として認識している。タンポポみたいにどこにでもあるやつではなくて、ちょっとレア度の高い野苺とかの仲間だ…

金木犀

研究室の庭に、一本の金木犀の木がある。 ススキが金色になる頃になると、小さなオレンジ色の花を山ほど咲かせ、甘い香りをそこら中にふりまく。 窓を開けると建物全部が花の香りに包まれるし、庭に出ればまるで金木犀のために庭があるかのような顔をしてい…

お酒の時間─後編

右「次は僕で。種花蜜酒です」 博「蜂蜜酒の類かね。その割には赤いが」 左「蜂蜜酒は作るとそれこそ密造酒なので、違うはずですよ……違うよね?」 右「あの、なんだったっけ。常に木の中で大量に木苺酒みたいなのが出来てる場所あるじゃないですか。あれを汲…

お酒の時間─前編

博「では、これより第3回密造酒の会を開催する」 右「前から気になってたんですが」 博「なんだね」 右「密造酒って違法じゃないですか」 左「いや」 右「違うの?」 左「酒税法に違反していないことはある程度確かめてますから、厳密にいうと密造酒じゃあ…

幽霊の標本2

以前お話しした幽霊の標本の写真が撮れたので、ご紹介したい。 元々は飲料品なのだろうか、青っぽい色の古びたガラス瓶に、少し引っ張ったくらいでは抜けそうもない力でコルクがねじ込んである。 中は埃のようなものでぼんやりと白く、光が当たると白い靄が…

雨の標本と、箱の話

「雨」という名の植物の枝を標本にしたものである。この木には半透明の果実が大量に実るため、朝日を浴びると雨が降っているように樹全体がキラキラと光る。 雨を保存するのには、額縁のような新作の箱が使われた。この箱は、実のところ別の用途を目的とした…

マッチ箱に標本2

研究室のマッチ箱には、先日の綿毛のみならず様々なものが保存されている。 画像は言わずと知れた飴団栗(あめどんぐり)である。飴でできた木の実だが、博士の装置で特殊な処理をしてあるので食べられない。無論暑い日に溶けたりアリが並んだりもしない。 …

マッチ箱に標本1

日常の中で出会う箱の中で最も小さい部類に入るのが、マッチ箱ではないだろうか。 マッチ箱と聞くと「とても小さくて、パッケージも色々あって、しかもスリーブ箱なんていう洒落た作りをしている」なんて印象を抱きはしないだろうか。 「ミニチュア」という…

種花の蜜について

種花とは、種から茎と花のみが伸びる文字通り「根も葉もない」草であると話した。画像はその種から蜜が滴っている様子だ。 理由はまだ分からないが、そういう草なのである。 こうして瓶に挿しておくと面白いインテリアだが、本来この蜜は地面に染み込んでい…

図鑑

図鑑。 あなたはお好きだろうか。 私は好きだ。と言いたいところだが、私の感覚としては好きというより便利という方が近いかもしれない。昨今では凝ったデザインのおしゃれな図鑑も出回るようになったが、私の好みで言うなら、デザインはさほど重要視しない…