森のなかの標本室

不思議な標本を作るアートユニット「飴色団栗研究室」にまつわるちょっとしたおはなし

苔と腐蝕と

以前撮影した写真だが、錆びて朽ち始めた鉄製の側溝の蓋の周りに、ぽこぽこと丸い苔がたくさん生えている。 私はこれを見て「もこもこの生きものがビスケットのように鉄をかじっているみたいだ」と思ったから撮影したわけだが、まあそれは置いておくとしよう…

妖精の棲家

貝殻に作られた妖精の巣……もとい妖精の棲家である。貝殻は人気の物件で、水辺故かよく見ると苔生している。 煉瓦造りのような見た目から「巣」ではなく「棲家」と呼んでいるが、「家」という言い方をしないのは、妖精の生態にある。 彼等は確かに羽の生えた…

光る飴

飴団栗は、差し込む光の角度や強さによって、稀に内側から輝いているような光りかたをする。発光する性質はないし、中に電球が仕込んであったりもしない。薄暗い標本箱の中でキラリと光を発する様を見つけた時は、中々に運が良い。 飴団栗はその名の通り飴で…

試験管立て

(旧) 新しい試験管立てが完成した。以前のものは四角い箱に突き刺さっているようなデザインだったが、標本によっては横のラインが邪魔になるのと、一本用のものが多少繊細さに欠けるため、新しくより繊細なデザインが開発された。 (新) 素材は真鍮と紫檀…

番外編:展示感想─超絶技巧とアートブック

ついこの前の土日を使って、週末雑貨屋【海福雑貨分室】さんへ作品の納品に行って来たのですが──ありったけのロマンが詰め込まれた素敵なお店ですが、そのご紹介はまたいずれ──せっかくなので東京で驚異の超絶技巧展(三井記念美術館)とアートブックフェア…

標本室の朝

曇りの日の朝日というのは、独特の色をしている。どんよりとした雲の色と清々しい朝の光の色が混ざり合って、憂鬱なようなそうでもないような、散歩をするよりは読書をしたい、そんな色になる。 片付け上手が一人もいないため、標本室も研究室もいつも標本が…

彼岸花

「彼岸花」というより、「草花火」と呼びたい。 人によってはこの花を冥界の入り口に咲く花のように扱うが、私はこれを、見つけると嬉しい可愛い花として認識している。タンポポみたいにどこにでもあるやつではなくて、ちょっとレア度の高い野苺とかの仲間だ…

金木犀

研究室の庭に、一本の金木犀の木がある。 ススキが金色になる頃になると、小さなオレンジ色の花を山ほど咲かせ、甘い香りをそこら中にふりまく。 窓を開けると建物全部が花の香りに包まれるし、庭に出ればまるで金木犀のために庭があるかのような顔をしてい…

お酒の時間─後編

右「次は僕で。種花蜜酒です」 博「蜂蜜酒の類かね。その割には赤いが」 左「蜂蜜酒は作るとそれこそ密造酒なので、違うはずですよ……違うよね?」 右「あの、なんだったっけ。常に木の中で大量に木苺酒みたいなのが出来てる場所あるじゃないですか。あれを汲…

お酒の時間─前編

博「では、これより第3回密造酒の会を開催する」 右「前から気になってたんですが」 博「なんだね」 右「密造酒って違法じゃないですか」 左「いや」 右「違うの?」 左「酒税法に違反していないことはある程度確かめてますから、厳密にいうと密造酒じゃあ…

幽霊の標本2

以前お話しした幽霊の標本の写真が撮れたので、ご紹介したい。 元々は飲料品なのだろうか、青っぽい色の古びたガラス瓶に、少し引っ張ったくらいでは抜けそうもない力でコルクがねじ込んである。 中は埃のようなものでぼんやりと白く、光が当たると白い靄が…

雨の標本と、箱の話

「雨」という名の植物の枝を標本にしたものである。この木には半透明の果実が大量に実るため、朝日を浴びると雨が降っているように樹全体がキラキラと光る。 雨を保存するのには、額縁のような新作の箱が使われた。この箱は、実のところ別の用途を目的とした…

マッチ箱に標本2

研究室のマッチ箱には、先日の綿毛のみならず様々なものが保存されている。 画像は言わずと知れた飴団栗(あめどんぐり)である。飴でできた木の実だが、博士の装置で特殊な処理をしてあるので食べられない。無論暑い日に溶けたりアリが並んだりもしない。 …

マッチ箱に標本1

日常の中で出会う箱の中で最も小さい部類に入るのが、マッチ箱ではないだろうか。 マッチ箱と聞くと「とても小さくて、パッケージも色々あって、しかもスリーブ箱なんていう洒落た作りをしている」なんて印象を抱きはしないだろうか。 「ミニチュア」という…

種花の蜜について

種花とは、種から茎と花のみが伸びる文字通り「根も葉もない」草であると話した。画像はその種から蜜が滴っている様子だ。 理由はまだ分からないが、そういう草なのである。 こうして瓶に挿しておくと面白いインテリアだが、本来この蜜は地面に染み込んでい…

図鑑

図鑑。 あなたはお好きだろうか。 私は好きだ。と言いたいところだが、私の感覚としては好きというより便利という方が近いかもしれない。昨今では凝ったデザインのおしゃれな図鑑も出回るようになったが、私の好みで言うなら、デザインはさほど重要視しない…

世界は不思議である

世界には、どうしてこんなに素敵なものがあるの?綺麗なものがあるの?不思議なものがあるの? 我々のステートメント(声明文)の冒頭部分である。 画像は飴団栗。飴でできたドングリという一見して突拍子もない、いかにもファンタジックなものに見えるかも…

夏の残骸

今週のお題「はてなブログ フォトコンテスト 2017夏」 思い返せば夏らしくない夏であった。 海も花火も日焼けもなく、ただ気温の高さだけにうんざりしながら仕事を続けていた。 唯一夏の断片と言えなくもない記憶と言えば、梅雨が終わっても茎についたまます…

つぶつぶつぶ飴

茎を除けば小指の先よりも小さい実がなる、飴団栗の仲間である。半透明の飴でできた小さな木の実である。粒飴と呼んでいたが、近いうちに名前が変わるかもしれない。 というのも、このあたりの仲間の分類を見直すことになりそうだからである。 それはさてお…

本棚を巣にしている

研究室では竜が数匹放し飼いになっているのだが、作業台、標本室、居住スペースと建物中を好きに歩き回っている。 先日は、書斎の本棚の中に巣を作り始めているのを発見した。花竜の成体である。 空いたスペースで一眠りしているだけに見えるが、本棚の下に…

昼寝

真夏の昼下がりのことであった。私と猫共用のクッションに猫が転がっていたので、なんとなく隣に寝転がってみた。猫はちょっと顔を上げると、当たり前の顔で私の二の腕を枕にして寝入ってしまった。 クーラーの効いた部屋。エアコンのリモコンは遥か遠く机の…

梅雨の名残り

日陰に咲いた紫陽花が、梅雨が終わって真夏を過ぎるころになっても、朽ちることなくそこにあるのをご存知だろうか。 鮮やかな青紫だったものが少しずつ少しずつ時間をかけて色褪せ、薄い緑に近づいてゆく。 その姿は、梅雨の名残りのようにどこかノスタルジ…

雲行きがあやしくとも

雲行きがあやしいというか、怪しむまでもなく雨からは逃れられない雰囲気の空である。 しかしながら、そんな空も写真に撮ってみると、あるいは絵に描いてみるとなかなかどうして面白い表情をしているものだ。 雲ひとつない快晴の空は大変爽やかな気持ちにな…

地味な虹

画像は蛋白果(たんぱくか)の標本である。角度を変えると遊色効果があらわれる。その光り方には一つひとつ個性があり、研究所の中でも人気の標本の一つである。 蛋白果という名前ではあるものの、オパール(蛋白石)に比べると虹の色は随分と淡い。要するに…

森からの荷物

研究所宛に、森の住人から妙な荷物が届くことがある。見たこともない文字のラベルが貼られているもの、厳重に封印されているもの、無駄に複雑な結び目の紐がかけられているもの……送り主によって様々である。 その中身は変な形の石だったり、何かの種であった…

ガラスの小瓶の魅力とは

机の上の小さいガラス瓶。 心惹かれないだろうか。 スクリュー式の蓋も悪くないが、コルク栓がしてあるとなお良い。 一つでも大変可愛らしいが、たくさん並んでいるとさらに良い。 我々はガラスのように透き通ったものを、少し特別なものを見つけたような気…

採集鞄の中身

今週のお題「カバンの中身」 我々が採集鞄と呼んでいる木製トランクは、冒険好きにとっては中々魅力的なものが詰まっていると思う。 例えば ・標本採集には欠かせない紙の箱 ・その場で薬品を使った検査を行ったり、小さいものをとりあえず放り込んでおいた…

標本箱の種類─紙箱

もっともデリケートな表情を見せるのが、紙の箱である。 背景に紙が貼ってあるにしろないにしろ、木製の縁というのは存外インパクトが強い。 その重厚さが良いところでもあるのだが、例えばタンポポの綿毛のようなか細く小さなものをひとつ入れたところで、…

標本箱の種類─紙背景

さて、今日は紙背景の標本箱について解説しよう。 たくさん並べるほど良い板背景の箱に対して、白い壁の部屋にぽんと一つ置いても負けない存在感を持つのが、紙張りの標本箱である。 箱の中の余白が美しく見えるため、シンプルで上品なレイアウトが可能であ…

標本箱の種類─板背景

飴色団栗研究室の標本箱は、現在大きく分けて3種類ある。 ①背景が板の標本箱 ②背景に紙が貼られた標本箱 ③紙製の標本箱 今日はそのうちの一つ、板背景の標本箱について説明しよう。 背景が板の標本箱は、何よりも箱の中に大きな余白を作らないことが重要で…