森のなかの標本室

不思議な標本を作るアートユニット「飴色団栗研究室」にまつわるちょっとしたおはなし

おはなし

マッチ箱に標本1

日常の中で出会う箱の中で最も小さい部類に入るのが、マッチ箱ではないだろうか。 マッチ箱と聞くと「とても小さくて、パッケージも色々あって、しかもスリーブ箱なんていう洒落た作りをしている」なんて印象を抱きはしないだろうか。 「ミニチュア」という…

種花の蜜について

種花とは、種から茎と花のみが伸びる文字通り「根も葉もない」草であると話した。画像はその種から蜜が滴っている様子だ。 理由はまだ分からないが、そういう草なのである。 こうして瓶に挿しておくと面白いインテリアだが、本来この蜜は地面に染み込んでい…

図鑑

図鑑。 あなたはお好きだろうか。 私は好きだ。と言いたいところだが、私の感覚としては好きというより便利という方が近いかもしれない。昨今では凝ったデザインのおしゃれな図鑑も出回るようになったが、私の好みで言うなら、デザインはさほど重要視しない…

世界は不思議である

世界には、どうしてこんなに素敵なものがあるの?綺麗なものがあるの?不思議なものがあるの? 我々のステートメント(声明文)の冒頭部分である。 画像は飴団栗。飴でできたドングリという一見して突拍子もない、いかにもファンタジックなものに見えるかも…

夏の残骸

今週のお題「はてなブログ フォトコンテスト 2017夏」 思い返せば夏らしくない夏であった。 海も花火も日焼けもなく、ただ気温の高さだけにうんざりしながら仕事を続けていた。 唯一夏の断片と言えなくもない記憶と言えば、梅雨が終わっても茎についたまます…

つぶつぶつぶ飴

茎を除けば小指の先よりも小さい実がなる、飴団栗の仲間である。半透明の飴でできた小さな木の実である。粒飴と呼んでいたが、近いうちに名前が変わるかもしれない。 というのも、このあたりの仲間の分類を見直すことになりそうだからである。 それはさてお…

本棚を巣にしている

研究室では竜が数匹放し飼いになっているのだが、作業台、標本室、居住スペースと建物中を好きに歩き回っている。 先日は、書斎の本棚の中に巣を作り始めているのを発見した。花竜の成体である。 空いたスペースで一眠りしているだけに見えるが、本棚の下に…

昼寝

真夏の昼下がりのことであった。私と猫共用のクッションに猫が転がっていたので、なんとなく隣に寝転がってみた。猫はちょっと顔を上げると、当たり前の顔で私の二の腕を枕にして寝入ってしまった。 クーラーの効いた部屋。エアコンのリモコンは遥か遠く机の…

梅雨の名残り

日陰に咲いた紫陽花が、梅雨が終わって真夏を過ぎるころになっても、朽ちることなくそこにあるのをご存知だろうか。 鮮やかな青紫だったものが少しずつ少しずつ時間をかけて色褪せ、薄い緑に近づいてゆく。 その姿は、梅雨の名残りのようにどこかノスタルジ…

雲行きがあやしくとも

雲行きがあやしいというか、怪しむまでもなく雨からは逃れられない雰囲気の空である。 しかしながら、そんな空も写真に撮ってみると、あるいは絵に描いてみるとなかなかどうして面白い表情をしているものだ。 雲ひとつない快晴の空は大変爽やかな気持ちにな…

地味な虹

画像は蛋白果(たんぱくか)の標本である。角度を変えると遊色効果があらわれる。その光り方には一つひとつ個性があり、研究所の中でも人気の標本の一つである。 蛋白果という名前ではあるものの、オパール(蛋白石)に比べると虹の色は随分と淡い。要するに…

森からの荷物

研究所宛に、森の住人から妙な荷物が届くことがある。見たこともない文字のラベルが貼られているもの、厳重に封印されているもの、無駄に複雑な結び目の紐がかけられているもの……送り主によって様々である。 その中身は変な形の石だったり、何かの種であった…

ガラスの小瓶の魅力とは

机の上の小さいガラス瓶。 心惹かれないだろうか。 スクリュー式の蓋も悪くないが、コルク栓がしてあるとなお良い。 一つでも大変可愛らしいが、たくさん並んでいるとさらに良い。 我々はガラスのように透き通ったものを、少し特別なものを見つけたような気…

採集鞄の中身

今週のお題「カバンの中身」 我々が採集鞄と呼んでいる木製トランクは、冒険好きにとっては中々魅力的なものが詰まっていると思う。 例えば ・標本採集には欠かせない紙の箱 ・その場で薬品を使った検査を行ったり、小さいものをとりあえず放り込んでおいた…

標本箱の種類─紙箱

もっともデリケートな表情を見せるのが、紙の箱である。 背景に紙が貼ってあるにしろないにしろ、木製の縁というのは存外インパクトが強い。 その重厚さが良いところでもあるのだが、例えばタンポポの綿毛のようなか細く小さなものをひとつ入れたところで、…

標本箱の種類─紙背景

さて、今日は紙背景の標本箱について解説しよう。 たくさん並べるほど良い板背景の箱に対して、白い壁の部屋にぽんと一つ置いても負けない存在感を持つのが、紙張りの標本箱である。 箱の中の余白が美しく見えるため、シンプルで上品なレイアウトが可能であ…

標本箱の種類─板背景

飴色団栗研究室の標本箱は、現在大きく分けて3種類ある。 ①背景が板の標本箱 ②背景に紙が貼られた標本箱 ③紙製の標本箱 今日はそのうちの一つ、板背景の標本箱について説明しよう。 背景が板の標本箱は、何よりも箱の中に大きな余白を作らないことが重要で…

真夏の早朝

蝉の声もまだ聞こえない朝の時間帯。青っぽい匂いのする爽やかな空気。日差しはキラキラと暖かいのに、夜の間に冷やされた地面はまだひんやりとしている。 草むらの中に、露草の生えた妖精の棲家がひとつ。中はまだ寝静まっているようで、何かが動く気配はな…

妙な植物のスケッチ達

フィールドノートというか、スケッチブックというか、見つけたものや気づいたことをさっとメモするノートである。 文庫サイズのノートに、へんてこな絵やメモがしこたま書き込まれている。 写真は、先日紹介した歌鳥である。 まだ実が青い時の様子が書かれて…

歌う小鳥の種

森の中にも、特に風通しの良い場所がいくつかある。そういうところで、風の強い季節に時々聞こえる音がある。 一つひとつはか細い笛のような音だが、それと似たような音が微妙に音程や音量を変えながらいくつもいくつも集まって、鳥の群れが一斉にさえずって…

研究所と研究室

この辺りで研究所、研究室、標本室などの表記の違いについてまとめておこう。 ○研究所 「博士」の研究所。名称は「樫研究所(かしのきけんきゅうしょ)」 所属しているのは博士と右の研究員、左の研究員の3人だけ。 ただ、博士の趣味仲間(遺跡で発掘した変…

標本室

引き出しを開けると、そこにはなんだかわからない変なものがたくさん詰まっていた。 透き通った硬い木の実、小さい鳥の翼に根っこが生えたようなやつ、とげとげのナッツの中に透明な結晶ができているもの。 それらは全部標本箱の中に綺麗に収められていて、…

森の植物たち

我々が採集に行っている「森」 世界の奥の森とか、近くて遠い森とか、他にも色々な呼び名があるが、まあそれは置いておいて。 飴団栗、種花、星豆、そういった変な植物がたくさん生えている森のことである。 ──あなたはどうも、ここには変な植物しか生えてい…

幽霊の標本

今週のお題「ちょっとコワい話」 標本室を整理していると、時々何も入っていない試験管や標本箱を見つけることがある。 そういうものには大抵、細かいチリや気体といった肉眼では見えないものが入っている。「○○から発生した蒸気」というような比較的まとも…

夜の研究室3

昼と夜の研究室では見え方が違う、という話をした。 昨日の話は、考え方によっては違うとも言えるというような哲学チックで曖昧な話であったが、研究室にはもっとあからさまな昼と夜の違いもある。 その代表が、暗いところで光る培養器である。 正確に言うと…

夜の研究室2

昼の研究室と夜の研究室、あなたは同じものだと思うだろうか。 違う、という話を今日はしようと思う。 影の標本の記事を書いた時に、影とはそこに何かがあるのではなく、そこに何かが「ない」のである、という話をした。それは当然闇も同じだ。 光は波である…

夜の研究室1

蒸し暑かった昨日までとは打って変わって、涼しい夜であった。窓の外からは雨の音。時折雷が室内を照らすが、明るさの割に音は遠い。 そんな夜中の研究室なんてお化けのひとりやふたり出そうなものだが、生憎そんな怪奇現象が起きたことはない。 屋根を打つ…

透きとおる

透き通ったものに、心ひかれないだろうか。 明かりにかざすとキラキラと光を屈折させるようなもの、欲しくはならないだろうか。 人はなぜ、透き通ったものを美しいと感じるのか。光が反射するか吸収されるか透過するか、その違いでしかないではないか。 キラ…

お茶の時間2

左「コーヒー?」 右「うん、コーヒーかな」 左「私はアイスレモンティーにする。暑い」 右「あ、僕もそれがいいかも」 左「博士は何にします?紅茶キノコ以外で」 博「窓の前にエノコログサが群生しているのだが、お茶にできると思うかね」 右「エノコログ…

こどもごころ

流れる雲の形を見ているだけで幼い頃は随分と時間を潰せたものだが、今はなかなかそうもいかない。 刻々と形を変える雲を眺める楽しみは知っているが、全く同じように楽しいかと問われれば、そこまで夢中にはなっていないと答えざるを得ない。 こうして「感…