森のなかの標本室

不思議な標本を作るアートユニット「飴色団栗研究室」にまつわるちょっとしたおはなし

植物、生物、標本についての解説

母岩草

母岩という言葉をご存知だろうか。では結晶は?鉱物の結晶が生えている、その母体となっている岩のことを母岩と呼ぶ。ぼがん、と発音する。 母岩草という名前は、そのトゲのある浮き袋の中に結晶が育ち、まさに草が母岩の役目を果たしているところから来てい…

活字喰の生態

最近新たに発見された植物で、活字喰(カツジクイ)という。活字に寄生し、厚みのほとんどない細い根で文字を吸い取って消してしまう。発見次第対処をしないと、本であれば一冊まるごと食い尽くされる羽目になる。 とはいっても育つスピードは苔と同じ程度で…

後ろ向きの光

物事を前向きに考えるだけで、世界が輝いて見える。素敵な発見がある。確かにそうだ。 では、我々はいつも前向きでいなければならないのか?気持ちを明るくする努力をし続けねばならないのか?私はそうは思わない。 涙、という名前の植物がある。これには不…

種花と占い

種から花だけが咲くから、種花。 発見された当初はそのまま「種から花」と呼ばれていた。それを省略して「種花」なのである。 「花の遺跡ではかつて占いに使われていた」といつも紹介しているが、それ故に花の遺跡でも「種花」と呼ばれていた訳ではない。当…

光る飴

飴団栗は、差し込む光の角度や強さによって、稀に内側から輝いているような光りかたをする。発光する性質はないし、中に電球が仕込んであったりもしない。薄暗い標本箱の中でキラリと光を発する様を見つけた時は、中々に運が良い。 飴団栗はその名の通り飴で…

雨の標本と、箱の話

「雨」という名の植物の枝を標本にしたものである。この木には半透明の果実が大量に実るため、朝日を浴びると雨が降っているように樹全体がキラキラと光る。 雨を保存するのには、額縁のような新作の箱が使われた。この箱は、実のところ別の用途を目的とした…

種花の蜜について

種花とは、種から茎と花のみが伸びる文字通り「根も葉もない」草であると話した。画像はその種から蜜が滴っている様子だ。 理由はまだ分からないが、そういう草なのである。 こうして瓶に挿しておくと面白いインテリアだが、本来この蜜は地面に染み込んでい…

つぶつぶつぶ飴

茎を除けば小指の先よりも小さい実がなる、飴団栗の仲間である。半透明の飴でできた小さな木の実である。粒飴と呼んでいたが、近いうちに名前が変わるかもしれない。 というのも、このあたりの仲間の分類を見直すことになりそうだからである。 それはさてお…

本棚を巣にしている

研究室では竜が数匹放し飼いになっているのだが、作業台、標本室、居住スペースと建物中を好きに歩き回っている。 先日は、書斎の本棚の中に巣を作り始めているのを発見した。花竜の成体である。 空いたスペースで一眠りしているだけに見えるが、本棚の下に…

歌う小鳥の種

森の中にも、特に風通しの良い場所がいくつかある。そういうところで、風の強い季節に時々聞こえる音がある。 一つひとつはか細い笛のような音だが、それと似たような音が微妙に音程や音量を変えながらいくつもいくつも集まって、鳥の群れが一斉にさえずって…

星豆

星雲のような色合いからそう呼ばれている豆である。普通に分類するとしたらインゲン豆の仲間になるのだろうが、「森」の植物には独自の分類法が採用されているため、似ていても、インゲン豆ではない。 霧の谷付近に多く自生しており、かの民はこの星豆を甘く…

母岩草

殻からトゲの生やしたそれは、ウニでも木の実でもなく、水草の浮きだ。 生まれたてのころは水面にぷかぷかと空洞を浮かべているが、10年20年とかけて少しずつ水中のミネラル分を吸収していく。 そしてそれはキラキラ光る結晶となって、空洞のなかに育ってい…

昨日おとといと博士の薄気味悪い趣味……趣味?についての話であったので、今日は気分を変えて研究室のペットを紹介しよう。 ドラゴン、と呼ぶにはどうにも覇気がない、竜の雛である。主食は林檎。 もう丸2年は飼っている気がするが、まだ雛である。 なにせ竜…

影の標本

「影を標本にする」という試みを最近始めた。 影とは即ちその周囲と比べて光の当たっていない部分のこと。 つまり、そこに何かがあるのではなく、そこに何かが「ない」のである。 それは、花が落とす繊細で美しい影を保存するというだけではなく、「ないもの…

種、そして花

種花、という花がある。 タネハナ、ではなくシュカ、である。 研究室の試験管の中でしこたま培養されている。 画像の中で、根元が黒っぽい種になっているものがそれである。 葉もなく、根も出さず、種からスッと茎と花だけが伸びるが故に「種花」。 「根も葉…

飴、という言葉は私にとっていくらか新鮮だ。 研究員は一人思う。 物心ついた頃からあのキラキラした菓子のことはキャンディ、と呼んでいた。 しかし、「これ」はやはりどうにも「飴」なのだ。キャンディという響きの軽やかさとは少し違う、とろりとしてもっ…