森のなかの標本室

不思議な標本を作るアートユニット「飴色団栗研究室」にまつわるちょっとしたおはなし

研究室

f:id:CaramelAcorn:20170712165915j:image

ぽたり、ぽたりと水の滴る小さな音が聞こえる。

それが余計に、研究室内が静けさに包まれていることを意識させる。

音が加わることでより静かに感じるとは、不思議なものだ。

スポイトを手にした研究員はしばし手を止めて物思いにふけった。

これを「静けさの素」と名付けよう。そうだな、何か……この音を音楽にできないだろうか。

 

試験管に水滴が落ちる。ぽたり。

試験管の中で小さな花が育つ。ゆらり。

 

半分液体が入ったままのスポイトが空中でゆらゆらと揺れ、ふん、ふん、と小さく鼻歌が漏れる。

研究員は思いついたとばかりにがばりと顔を上げると、左手に握ったスポイトの中身をいくつかの試験管に素早く落とし、蓋をするといくつかの道具を片付けて部屋を後にした。

 

扉の向こうからぽろん、ぽろんとピアノの音色が聞こえ始めた。