森のなかの標本室

不思議な標本を作るアートユニット「飴色団栗研究室」にまつわるちょっとしたおはなし

地下遺跡

砂埃を慎重に避ける。

ランタンの光を当てると少しキラキラとする砂埃。

柔らかい筆を使って慎重に、慎重に。

 

はっと息を飲んで研究員は細い竹のピンセットを取り出した。

砂埃の中から、小指の爪の先ほどの小さなかけらをつまみ上げ、明かりにかざす。

ピンセットを握った右手がぶれないよう視線をそちらにやったまま、左手で胸に下げた革のケースに指を突っ込んで虫眼鏡のレンズを取り出す。

 

愛用のルーペを覗き込んだ研究員は、傍目から見て時を止めていた。

10分、20分、じっくりと観察する。

そして深く頷くと、木製の鞄の中から綿の詰まった小さなアルミケースを取り出して、大切にしまった。

 

そして、ルーペのレンズを元に戻し、ピンセットを筆に持ち替えると再び砂埃を避け始める。

 

ふわり。

さらり。

いくらやっても飽きない。

 

近くで別のものを採集していた同僚はため息をついてとっくに帰った。

あれからどれくらい時間が経ったかわからないが、まあ、夕食のころになれば呼びに来るだろう。

それまでしばし、この至福の時間を満喫しようではないか。

研究員がそう感じたのは無意識化で、彼の集中力はいま全てが砂埃に注がれている。

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