森のなかの標本室

不思議な標本を作るアートユニット「飴色団栗研究室」にまつわるちょっとしたおはなし

綿毛

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机に敷いた紙の上に、ピンセットでそっとタンポポの綿毛をひとつ乗せる。紙に描かれた紋様の上にぴったり合わせて。

 

息をひそめてそっと、そっと。

 

しかし無情にも、そのひそめた息で綿毛はふわりと浮かび上がり、紙の上から机の隅にたまった埃の上へと転げ落ちていった。

 

これで3度目だ。

思わずついたため息で、3つの綿毛が絡まりあって転げ回る。

 

タンポポの綿毛はどこまで遠くに飛ぶのだろうか。

 

日本植物生理学会のQ&Aでは「わからない」という回答がなされていたが、確かに、風に乗った綿毛のひとつをどこまでも追いかけるなんてこと、できそうもない。

 

もっと足の速い動物も、もっともっと速く飛べる鳥もたくさんいるというのに、ふわりふわりと見えなくなってだれも追いつけない、綿毛がひとつ。

 

タンポポの綿毛の影の標本を作ったときは大変繊細なものができたと喜んだものだが、タンポポの綿毛そのものも、実はかなり不確かな存在なのかもしれない。