森のなかの標本室

不思議な標本を作るアートユニット「飴色団栗研究室」にまつわるちょっとしたおはなし

幽霊の標本

今週のお題「ちょっとコワい話」

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標本室を整理していると、時々何も入っていない試験管や標本箱を見つけることがある。

 

そういうものには大抵、細かいチリや気体といった肉眼では見えないものが入っている。「○○から発生した蒸気」というような比較的まともなものをあれば、「青虫の寝息」のようなくだらないものもある。

 

ただ稀に、ラベルが貼られていない瓶や箱を見つけることもある。そういう場合は博士に確認を取る。記録を付け直す目的もあるが、本当に空であれば再利用するのだ。

 

抽斗の奥に転がっていた少し大きめの瓶について博士に尋ねたのは、先日のことであった。

 

それを確認した博士は、泥沼のように淀んだ目で瓶を見つめながらこう言った。

 

「それはね、幽霊の標本だよ」

 

彼はそれ以上詳しく語ろうとしなかったので、私はとりあえずその瓶に「幽霊」と書いたラベルを貼り付けて標本室に戻しておいた。

 

ただ、部屋を出る前に振り返って見た博士が妙にニヤついていたので、もしかしたら嘘なのかもしれない。