森のなかの標本室

不思議な標本を作るアートユニット「飴色団栗研究室」にまつわるちょっとしたおはなし

夏の残骸

今週のお題はてなブログ フォトコンテスト 2017夏

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思い返せば夏らしくない夏であった。

海も花火も日焼けもなく、ただ気温の高さだけにうんざりしながら仕事を続けていた。

 

唯一夏の断片と言えなくもない記憶と言えば、梅雨が終わっても茎についたまますっかり色褪せていた紫陽花を、アルコールに沈めて標本にしたくらいのものであった。

 

蝉の声に顔をしかめながら庭に出て、ぶちりと花をちぎり取り、瓶の中に押し込む。ほんの僅かな間の出来事であった。

 

夜空に咲く打ち上げ花火のように華やかな形が、瓶の中でゆらゆらと、幽霊のように揺れる。

 

夏が終わり、秋が来て、この先何十年も残り続ける色褪せた紫陽花の標本は、この夏の残骸のようなものなのかもしれない。