水晶が採れる山に、特別濃密な雨雲がかかることがある。雨雲水晶はそういう場合にできる特別な水晶である。
どんよりと重い雨雲は黒い綿のように見えて小さな水の粒の集まりであるからして、山の地面や岩に簡単に染み込み馴染んでしまう。それが硬い岩の中の晶洞にまで達したとき、透明な水晶は薄暗い雨雲色へと変貌を遂げるのだ。
水晶のある場所に低く、長く、雨雲がとどまらなければならないため、なかなか貴重な品である。雨季のない国ではめったに見つかることがない。
一度溶け込んだ雲は中々抜けることがないが、雨雲水晶を万全の状態で保存しようと考えるなら、晴れた日の窓辺はいけない。それこそ丈夫な木の箱に入れ、光が入り込まないようしっかりと蓋をして、引き出しの奥に押し込んでしまうのが一番なのである。