森のなかの標本室

不思議な標本を作るアートユニット「飴色団栗研究室」にまつわるちょっとしたおはなし。毎週金曜日夜9時ごろ更新。

たからもの

あなたにとって、宝物とはどのような存在だろうか。

私にとっての宝物は、形と物語の間にある。

見た目が美しいというのは、大切な要素である。綺麗なものはそれだけで幸せを生む。ずっと大切にしたくなる。それは理屈ではなく、ただそうしたいと思わせる力を持っている。

それと同じくらい、物語は大切である。大切な人にもらった、拾った時に不思議な体験をした、そんな大したことでなくとも、宝物それぞれ違った物語を持っている。

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例えばこれは、美しい透明の石であるという見かけの他に、氷の化石であるという物語を持っている。標本のラベルは、研究室が与える物語だ。ここに氷の化石と貼ることで、それは透明な石から意味のある透明な石へと変わるのだ。

 

しかし、物語というのは、与えられたものでなくても良い。例えばあなたが氷の化石を手に入れたとして、それを氷の化石と思う必要性はどこにもない。あなたが星のかけらと思うならば、その物語を与えられた石は、その瞬間に星のかけらへと変わるのだ。

 

たからものという存在において、硬度だとか化学式だとか、結晶構造だとか、物理的な事実がどうであるかということは真理ではない。同じ石でも、見る人によって存在の本質が変わる。そういうものであって良いと私は思う。

 

精神の世界においては、全てが自由だ。いくつもの真実がある。サンタクロースはいてもいなくてもいいし、透明な石は、水晶でも、氷の化石でも、星のかけらでも、涙の結晶でも、何にでもなれる。その全てが真実として大切にされて良いのだ。

 

空想と現実の区別がつかなくなることは時に危険だが、それは「つかない」ことが危険なのであって、「つけない」ことは、内容をよく選べばむしろ人生を豊かに彩る。

 

あなたは、引き出しの奥に星のかけらを持っているだろうか。持っていないならば、そっと身の回りに目を向けてほしい。あなたの宝物にふさわしい美しい一片が、きっと見つかることだろう。

 

 

今週読んだ本:『千年の命 巨樹・巨木を巡る』高橋 弘 

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日本の主要な巨樹・巨木を写真付きで紹介する本です。

こんな木があるんだと眺めるのも楽しいですが、旅行の計画を立てるのにも使えそうです。写真も美しいものが多く、それぞれの木についてのエピソードも載っていて、満足の一冊でした。